NFLチアリーダーの仕事:米軍の慰問
新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年は自分が起業した理由をあらためて考えたお正月でした。
チアリーディングを通して、Compassion(思いやり)・Confidence(自信)・ Communication(コミュニケーション)の3Cを育てたい、そんな気持ちをから始めた会社ですが、今の世の中を見渡すと、この3Cが失われているような気がします。特に2022年から続くロシアのウクライナ侵攻には心が痛みます。
実は、チアリーダーの大切な仕事の一つとして、米軍兵士の慰問があります。米国では退役軍人の日に代表されるように、「世界の警察」として国内外で任務にあたる軍人に非常に高い敬意を示す文化があります。その感謝の表れとして、スポーツチームに属するチアリーダーたちも活発に慰問を行っています。
その中でも印象深いお話をしたいと思います。
チアリーダーの中のバラエティーチームメンバーとしての米軍基地慰問ツアーとして初めて訪問したのがバルカン半島にあるコソボでした。コソボは長らくセルビア共和国の自治州となっており、人口の90%以上を占める主にイスラム教徒のアルバニア系の住民との間での民族対立がつづいていました。1998年には武力衝突が激化したため、北大西洋条約機構=NATOがユーゴ空爆などに踏み切りました。米軍はNATO加盟国として派兵していました。
慰問どころか、海外の米軍基地を訪問するのは初めてのことです。オーストリア ウィーンから飛行機に乗り、ボディーガード付きの専用バスに乗りコソボの米軍基地に入りました。
当時、内戦の余韻がまだあり、兵士たちはコソボでの任務について話をしてくれました。ショックを受けたのは、宗教争いからイスラム系の女性をレイプした後、崖から落としていたというレストランの前を通りました。その崖の下にあるダム(だったと思います)から骨が大量に発見されというのです。そしてそれが何十年も前の話なのではなく、私が訪問したたった3年前だという衝撃的な話を聞いた時には、チーム全体が無言になったのでした。
犠牲になっている市民はもちろんのこと、極限状態の中で任務を遂行する兵士たち。そんな兵士たちに少しでも楽しいを気持ちになって欲しいと思いバラエティーショーを行う他、基地に滞在する中で、兵士の方々を見かければ話しかけ、会話をすることで元気づけることを心がけました。
基地内を歩いていれば、「僕たちのステーションに訪問しにきて!」と声をかけられ、オフィシャルな活動ではなくても、基地にいる時間はなるべく多くの活動をする様に心がけたのは、当時ディレクターだったDonaldの「親切心を持ちいつでもエンターテインするべき」というコーチングからでした。
1週間ほどの滞在の中で、休みなく朝から晩までステーション訪問した時もありました。食事の時もなるべく兵士達に話かけ会話をし、感謝の気持ちを伝えるという活動だったのです。
ツアー3回目の訪問は、イタリアでした。イタリア訪問は、当時、アフガニスタンでの何ヶ月もの滞在を終えた兵士たちを迎え入れるためのショーステージのためでした。何千人もの兵士たちがイタリアに戻り、待っている家族についに会うことができる兵士もいれば独身兵士達はイベントを楽しむのでした。ウェルカムイベントのステージ後のサイン会には行列が出来、アフターパーティーには私たちも参加しました。
実は、セキュリティ面のから、チアリーダーが慰問を行う時、送迎バスなどには必ず警備の兵士が付き、守られた状態で移動を行います。
しかし、ある時事件は起きました。
あるアフガニスタン帰りの1人の兵士とバスの窓越しに話しをしていた時のこと。すると、その兵士がバスを降りた途端、私を肩に担ぎ、一目散で走り始めたのです。私は、何が起きているのか理解できず、「もしかしてどっきり?」と思ったほどでした。しかし、冗談ではなかったのです。警備の兵士が後ろから一目散で追いかけ無事、みんなの元に帰ることが出来ました。
正直言うと、冗談でも許されるべき行為ではないとは思います。しかしその時は、アフガニスタンでの任務からのPTSDなどでとっさの行動に出てしまったのではないかと思い、Compassionの気持ちで留飲を下げました。もちろん米軍やその兵士からも謝罪がありましたが・・・
とはいえ、何があっても、チームと一緒にいれば、守られている状態であることの安心感を得ることができた経験でもありました。