カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルに参加しました!「感じる」ことが共感につながる。

みなさんはカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルを知っていますか?

カンヌといえば、映画「PERFECT DAYS」で公共トイレの清掃員役を演じた役所広司さんが男優賞が受賞し、これまで是枝裕和監督など日本人も受賞してきたカンヌ国際映画祭はとても有名です。

実は、映画祭と同じ時期に同じカンヌで広告界の世界三大広告賞とばれるカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルが開催されているんです。

この通称カンヌライオンズとよばれる広告界のお祭りに今回私も参加してきました!とはいっても、授賞式との者というより、その時期に開催されている広告のイベントなどに参加するためです。

そもそもなぜ今回カンヌに行こうと思ったのか?

それは、米国のメジャーリーグをはじめとしたプロスポーツのコンサルタント会社でエグゼクティブとして活躍する米国NFL時代チアリーダー時代の先輩のある一言からです。

「Maki、米国に進出するなら、グローバルレベルのブランディングを見ておいた方がいい」。

実は、今米国進出をするためのある新規事業を考えているんです!

まだ詳細については言えませんが、その先輩からの紹介で、昨年度カンヌライオンでいくつかの広告の作品が表彰されたクリエイターの方を紹介されました。

私の先輩は、フィリピン系アメリカ人、このクリエイターの方は韓国系アメリカ人です。どちらも米国社会ではアジア系のマイノリティとして活躍するビジネスウーマンです。これから米国でビジネスをやっていく上で、その二人から広告界のトップランナーを何人も紹介されました。そのうえで、ビジネスをしていく上でのマーケティングやブランディングの大切さをあらためて考えるきっかけとなりました。

そもそもなぜマーケティング・ブランディングなのでしょうか?

全く違うマーケットに進取する場合、自社の強み、進出する市場の構造や規模、競合、代替品やバリューチェーンなどすべてを考え戦略を練る必要があります。釈迦に説法ですが、ただ進出したいからでは失敗するだけです。何事も目的です。

戦略を考える上で大切な要素の一つは、その製品はどのようなバリューを顧客にもたらすのかという事です。
今の時代、従来型の顧客に「買ってもらう」マーケティングではではなく、顧客に「愛される」マーケティングとブランディングがとても大切だと思っています。

そのためには、どのような潜在ニーズがあり、その潜在ニーズに自社の製品がどうマッチするのか、そして顧客にどう考えて欲しいかが重要です。

そこまで考えたうえで、広告やクリエイティブは消費者の頭にイメージを植え付けるうえで核となってきます。その上でも今年の今年のライオン授賞作品はとても参考になりました。

やはりChatGPTや生成AIが主役だったようです。
でも、それを逆手に取ったハインツの作品は、とても面白いなと思いました。

皆さんもChatGPTでエゴサーチをやったことがあるかと思いますが、この作品は画像生成AI(DALL-E 2)に「ケチャップ」と入力するとにケチャップと入れると、どんな表現を使っても、ハインツの商品にそっくりな絵が生成されるというものです。

キャッチコピーは「EVEN ARTIFICIAL INTELIGENCE KNOWS “KETCHUP“ LOOKS LIKE HEINZ.(AIでさえ、「ケチャップ」と言えばハインツであることを知っている)」。納得感がありますよね。

それからアップルの作品です。

米国ではコロナ禍に、「Great Resignation(グレート・レジグネーション)」=「大量離職」と呼ばれる現象が大きな関心を集めました。「もう辞めた!」といってみずから仕事を辞める人の数が過去最多の水準になった時期もありました。

皆さんもコロナ禍には人生を考え直したと思いますが、アップルはこうした社会現象をストーリーに仕上げて、「アップル製品さえあれば、ストレスの多い仕事をやめて独立できる!」ということをコミカルにドラマ風に仕上げました。それがこのEscape from the Office(職場からの逃亡)です。

どちらも、ブランドの伝えたいメッセージを上位概念に上げ、誰もが心で思っていることをうまく表現した、非常にインサイトに富む作品です。

日本の作品はどうなんだろう・・・。

そんなことを考えさせられたときに、ある女性マーケターと話をする機会がありました。

この女性、日本では小規模ながら超有名なブランドの米国進出を手掛けている女性マーケターなのですが、日本の保守的なブランドは失敗を怖がって先行投資を避けると言います。そして、日本の作品にはクリエイティビティが足りないという事でした。

「日本がブランドの想いや情熱を表現する方向性より、いかにモノの販売に繋げるかという数字にみのフォーカスをしがち」

確かに、日本のメーカーの作品は、Uniqloなど一部を除き、商品のスペックや機能を全面に押し出したものが多い。しかし、機能の競争では、顧客が必要とする以上のスペック搭載をする無益な競争に陥るのは良く知られていることです。

ハインツはそういう意味で、「ケチャップといえばやっぱりハインツでしょ」ということを、顧客に思い出させることに成功していますし、アップルは無味乾燥な機能を超えたライフスタイルを提唱しています。そういう意味で、やはりグローバルレベルで認められているブランドや自社のストーリーテリングが非常に上手だと改めて感じました。

機能性や売り上げを無視すべきと言っているわけではありません。もちろんそれらも重要な要素です。

でも、私はストーリーテリングの先に売り上げがあると思います。「こんな自分でありたい」「懐かしい」「こんな人生でありたい」。

まずは、「共感」してもらうことが顧客とブランドの接点をつなぐ第一の関門ではないか、広告業界の人たちとの会話やパネルディスカッションイベントへの参加をして、それをとても感じました。

余談ではありますが、この旅ではパリにも立ち寄りました。美しいものが大好きな私は、あらためてパリに恋に落ちました。お腹が空いて、入った普通のカフェでのご飯が感動的に美味しかったり、デパートのディスプレイ一つしても美しかったり。まさに、料理もディスプレイもクリエイティビティの世界です。

以前、フランスの会社との取引があった際に担当者に「請求書がカッコ悪いから払いたくない。作り直して欲しい」と言われたことを思い出しました。もちろん、真面目なやり取りでは無く、笑いながらの「Maki、グローバル企業にしたいなら学んで」という会話の中でのことですが、やはりクリエイティブになるためには、冗談を言うくらいの余裕と、ユーモアが必要だと思いました。

それぞれの文化で「美」という観念は違いますが、今回は「美」に感動する機会が多かったです。そして、まず「感じる」ことが共感につながります。

「美」には様々な努力があり、それこそ色々な人たちが手をかけて愛情や情熱がかかって出来上がっていくものだと、さまざまな広告をみてクリエイターとの会話から感じました。そして、さまざまなコラボレーションから真のエネルギーが吹き込まれて、作り上げられたものには人の心を動かす力があるのだと。

まさに、広告、ブランディングはものを売るツールだけではなく、その場、その時代のものだけにならずに心を動かすものだということを感じました。

今回の旅で得たことを、クリエイティビティの源泉として、事業に生かしていきたいと思います。


世界をまたいで活躍中の友人たち(社長)


カンヌライオンイベント内、Wall-Street-Journal-(ウォール・ストリートジャーナル)パネルディスカッションイベント